卑屈の辞典 劣等感

太宰治が著した、人間を失格した男に、自らを「醜い」と言わしめた、或る気持。

中島敦が著した、虎になった男に、自らを「宮殿の礎」と言わしめた、或る反動を生むもの。

この感情はひねくれているため、素直に顔を出すことがない。「自己陶酔」や「優越感」という、その感情の反動のみが、人々に認知される。劣等感を抱えている人間でさえ、その性格を知らない。

したがって、劣等感は未だに、誰にも発見されていない。