ワナゴの辞典 走る

別役実日く、
「走るという行為は、未来へと進む意志によるものである。」(うろ覚え引用。)


私は部で、走るのが速い方だった。同学年では一番だった。四人の内、二人の先輩よりは速かった。でも、もう疲れた。


クラス内での、所謂「スクールカースト」というやつには、走る速さも影響する。ミもフタもないことだが、ホモソのヒエラルキーなど、もともとミもフタもない。


私は去年、長距離走でクラス一位(全校男子約500人の内、36位。クラス二位は50位くらい。)になった。


どうやら、それは私の評価を上げたらしく、遅刻ばかりしていた私にとっては都合が良かった。珍獣を見るように睨め付けられずに済む。


私は部活でも、忘れ物や遅刻が多いので、走るのと残飯処理、地形図の記入などが唯三?の取り柄だった。


だが、もうそんなものにすがる必要も感じられないし、世界の見え方が変わったので、おめおめと今まで通りのやり方を続けることもない。