緊張の受け方

体育

ヴォリボ*1をやったときの話。味方チームに無関心な私でも、少しは緊張した。その過去記事の、「緊張を溶かす」方法について

ステマ

ネタにされがちな、「痛みを感じない方法」というやつに似ている。零距離戦闘術はシステマも取り入れているので、ウェーブから入る方法もある。


あの芸人は恐らく、あまりしっかり習わなかったのだろう。呼吸法も大事だが、それ以上に体の使い方が重要になる。

力を抜く

表現し難いが、なんというか、硬直せずに動き続けることが重要になる。打撃を受けたとき、筋肉が緊張していて体が動かなければ、打撃エネルギーはそのまま打撃を受けたところに吸収される。力の流れはそこで終わり、大きなダメージをくらう。


しかし、例えば腹を殴られた場合、腹にブラックホールができたように空間のねじれを体で再現すれば、受けるダメージを軽減することができる。例えが分かりにくいと思うので分かりやすく言うと、打撃を受けたところから、同心円を描いて周りの筋肉を伸長させる。


勘違いしている人が多いので訂正しておく。「システマしてるから痛くない」のではなく、痛みを軽減することができるのだ。


上級者になれば痛みを感じないほどに軽減することができるため、あの芸人は「痛くないです」と言ったのだろう。しかしどう見ても痛そうだし、痛みを軽減する受け方もしていない。ああいう人間のせいでシステマという合理的な方法の印象が悪化したのは腹立たしい。*2

緊張に身体性を与える

だいぶ話が脱線したので、本題に戻る。システマの受ける技術については長々と説明したから、もう十分だろう。あとは経験してみるしかない。


次に、緊張を受ける方法について。システマ的な受け方がわかれば容易だ。緊張に身体性を与えればいい。分かりやすく言うと、緊張を打撃と捉えてそれを受ける。

精神=身体

長くなりそうだ…また脱線する。「体→心、心→体」という俗説は有名だろう。身体は精神と相互に影響を与え合うとする説だ。しかし、このデカルト的な考え*3は、最新の研究に否定されている。


ここで論文を紹介してもしょうがないので、分かりやすい例えを言う。あなたは、心拍数を上げずに緊張することができますか?恐らく、そんな人はいない。精神的な活動は必ず、身体的な活動と同時に起こる。


理性崇拝者は、「いや、精神活動は脳で起きる。生理的な変化は脳から分泌されるホルモンの副産物に過ぎない。」と言うかもしれない。しかし、そうではないのだ。

腸と脳

一般的には、脳から発生する理性がその人の行動を決定することになっているが、実際にはそうではない。大脳の発達は、かなりの割合で腸に依存している。乳幼児の脳は、ほぼ腸の活動や腸内環境によって決まると言っても過言ではない。


また、大人になってからも、腸内環境は精神とリンクしている。*4うつ病は腸内環境*5にも左右されることがわかった。また、腸は第二の脳とも呼ばれ、脊椎に次いで多い神経細胞を持ち、迷走神経を介して脳と相互に影響を与え合う。*6


他にも、興味深い例は腐るほどある。食べたいものは胃のバクテリアによって決まるし、ある腸内細菌叢が失われると、それが食物アレルギーや花粉症、皮膚炎などの原因になることがあるらしい。


人格者の心臓を移植されて食の好みが健康的になり、慈善事業に積極的に投資するようになった人もいる。心臓には、脳のような神経ネットワークがあるそうだ。殺された人の目を移植されて、殺される光景と断末魔に苛まれた人もいる。


原初的な文化には、病気になった臓器と同じ部位の肉を食べると治るという言い伝えがあるのは興味深い。とにかく、脳というのはあくまでハードウェアであり、情報を入出力するニューラルネットワークに過ぎない。精神的な活動は脳によってのみ起こるのではなく、全身と同時にあるのだ。

違和感の位置を探る

また脱線したので本題に戻る。緊張やフラストレーションなどを感じるとき、必ず身体的な感覚を感じる筈だ。図星を衝かれると胃が痛くなったり、緊張するとお腹が下ったりするのはそのためだ。胃痛や下痢でなくても、必ず身体に違和感を感じるだろう。先ずはその位置を探る。

違和感を薄める

方法は何でもいい。システマのように受けても良いし、他の方法でもいい。*7私は違和感を感じた場所を真上から突かれたことを想像して、それを受ける*8。大抵、緊張しているときは肩が硬直して強ばっていたり、浮き足立っていたりするから、下に沈むような想像が私には合う。


凝りを解すために、零距離*9のウェーブの準備運動のように、肩甲骨を回すのも良いかもしれない。股関節のウェーブができる人は、それもいいだろう。股関節の周りには太い血管や筋肉があるから、有効だ。

メタ認知する

「ハエになったと思って自分を眺める」という方法が有名だ*10が、これは私の性に合わないから、私はただ単に自分自身や感情を客観視するようにしている。


やはりここでも、メタ認知は重要だ。緊張しているところを突かれたことを想像するには、先ず緊張している場所を確認する必要がある。


慣れればメタ認知すら必要とせず、反射的に緊張を解けるようになるが、初めのうちは未だ想像した方がいいだろう。

根本的な解決を

これはシステマの受け方と同じで、あくまで衝撃を軽減する方法だ。ダメージをほぼゼロにすることができても、私を殴り続ける人が居なくならない限り、攻撃は終わらない。それと同じで、緊張をほぼ完全に誤魔化すことができても、緊張の原因は消えない。これは解消であって解決ではない。


自分の精神的平穏を脅かす問題を発見し、それを解決する必要がある。これはあくまで応急措置だ。問題を解決するまでの時間稼ぎに過ぎない。

*1:volleyball

*2:大衆も大衆で、システマについて無知だからといってあの芸人の失敗をやり玉にあげ「システマは使えない」と言うのは、あまりにも愚かというか、日本人的だと考えている。知らないなら調べればいい。←お得意の自己責任論が、なぜ大衆自身に適用されないのか。それが自己責任論の無責任の証拠だと考える。 学校というシステムにも問題があるように思う。何かわからないことがあったとき、能動的に調べたり考えたりする習慣を、日本の学校制度は奪う。アクティブラーニングは否定され、先生の言うことが正解になるからだ。←また、先生にやれと言われたことを学ぶ。心理学や社会学に興味があっても、受験制度のためにそれは封印される。 単純に、日本人が権威に弱いからかもしれない。あの芸人の功績については私は詳しくないが、知名度云々は別として、無知な大衆のため前にいるシステマ初心者は一つの権威だった。システマ知名度が低かったから、知っている人が少ないのも原因だったかもしれない。今では悪い意味で有名になってしまったけれど。

*3:「我思う、ゆえに我在り」に代表される、自我=精神と身体=存在とを分離させた考え方だ。本当は、自然と人間を完全に分けることができないように、―人間は植物に依存する存在だ―精神と身体とを分けることはできない。

*4:腸内環境が精神に影響を与えるのではない。

*5:一部の細菌

*6:脳はフィジカルな物質=身体である。精神ではない。

*7:大便を排泄するようなイメージはオススメできない。筋肉が緊張してしまう。

*8:「受ける」か「受け流す」かで迷ったが、物理的には流していないので前者を選んだ。「ほぼ吸収する」という表現が最適かもしれない。

*9:zero range combat system

*10:観察する自己に具体的な身体があった方が分かりやすい人の方が多いのだろう。